段階的審査
本審査は、漁業がMSC規格を満たしているかどうかを認証機関が見極めるために行う、詳細で厳格、且つ公開の下に行われるプロセスです。漁業クライントが認証機関と契約を交わし、本審査に入ったことを認証機関がMSCに通知した時点で審査の開始となります。
本審査に入ることを表明したすべての漁業は、本ウェブサイトの漁業を探すのページで公開されています。また、各漁業についてのページがあり、審査の7つのステップを進むごとに、更新されます。
認証までの7つのステップ
以下のことも知っておかなければなりません。
ステップ1:告知と審査チームの成立
認証機関は、クライントが本審査に入ることについて、一般および対象となるステークホルダーに告知します。先ずはMSCに報告が行き、MSCの方でステークホルダーにEメールを送り、ウェブサイトを更新します。通常、プレスリリースも行います。
漁業へのアドバイス
漁業クライアントと認証機関は、事前に詳細なプロジェクト計画を準備しておくことです。そうすれば告知と同時に速やかに審査に進むことができます。
メディアへの発表準備をしておくと良いでしょう。認証機関、MSC、クライアントとの間で発表日を決め、共同のプレス声明を事前に準備しておくべきです。その際、スポークスマン、対象とするメディア、適切な使用言語を決めておきます。通常こうした準備は、クライアント漁業が本審査に進む旨の正式な通知が、認証機関からMSCになされる2~3週間前に、Eメールや電話会議によって行われます。
この機会を利用して漁業に関心を持つステークホルダーに直接コンタクトを取ることも可能です。良い関係を構築しておけば、認証取得を支援するステークホルダーのネットワーク構築に有利であり、後の段階でアイデアや援助面での貢献を得ることにつながります。
認証機関は、2 名から5名の独立した立場にある漁業専門家から成る審査チームを任命し、審査を行います。それぞれ、審査される漁業のタイプに関する専門知識やその他の経験に基づいて選出されます。この審査チームが、MSCの漁業認証方法に明記されているプロセスや段階に従い、漁業を採点、審査します。
漁業へのアドバイス
認証機関が審査チームを選出し、その人選に関してステークホルダーと協議します。多くの場合、この時点で、提案された審査チームについてステークホルダーのコメントを求めるための通知が、MSCウェブサイトに出されます。漁業クライアントも提案されたチームメンバーに関してコメントすることができます。チームメンバーが確定した段階で、MSCウェブサイトでメンバーのリストが公開されます。
ステップ2:評価ツリーの構築
審査は、漁業の実情に対する得点や条件から成る「評価ツリー」に照らして行われます。この評価ツリーは、持続可能な漁業のためのMSC規格を基に作成されており、個別の審査項目となる「評価指標」と、漁業の採点の基となる「得点基準」が盛り込まれています。従来のMSC認証プロセスでは、漁業の特性を踏まえた評価ツリーを、認証機関が独自に作成していましたが、2008年7月より、MSCの質と一貫性の向上プロジェクトの一環として作成された既定の評価ツリーを使用することとなっています。
評価ツリーの案はMSCウェブサイトに30日間掲載され、その間、クライアント、ステークホルダー、MSCからのパブリックコメントを受け付けます。この期間後、認証機関は最終的な評価ツリーをMSCのウェブサイトに掲載します。新しく導入された既定の評価ツリーについては、漁業の特性を正当に考慮した変更は認められる場合があります。そうした変更についての提案はすべて公開され、ステークホルダーはこれにコメントすることができます。
漁業へのアドバイス
評価ツリーは、審査プロセスの要です。漁業の実状をどのように審査するか、どう採点し、どのような条件を付けるかが定められています。クライアントは、評価ツリーの案を十分に確認し、認証機関にコメントすることが大切です。複雑な漁業の場合、クライアントは独自の専門家と相談したり、関連する管理機関に依頼して、詳細情報を認証機関に提出しても良いでしょう。
ステップ3:情報収集、ステークホルダーとの協議、採点
審査チームは、技術論文や報告書などを含む全ての関連情報を分析し、クライアントをはじめ、漁業管理者やステークホルダーと面談し、有り得るすべての情報や課題を把握するよう努めます。審査チームはこうした根拠を基に、評価ツリーと照らし合わせながら、漁業の実状を採点するのです。
漁業へのアドバイス
データの収集・分析段階においては、評価ツリーの構造に沿った形で、情報やデータを整理し、認証機関に提供することが審査の手助けとなります。また、評価ツリーの各評価指標について、ある情報が一定の得点に相当すると確信できる根拠を認証機関に説明することもできます。しかし、認証機関は、そうした漁業クライアントのコメントを考慮に入れますが、それを受け入れる義務はないことを留意ください。
この段階は、ステークホルダーにとって、漁業についての情報・知見を認証機関に伝え、関係者の意見を代弁する重要な期間です。
ステップ4:クライアントと外部専門家によるレビュー
認証機関は、漁業の概要や操業域の環境、管理システムについて記したクライアントへの報告書の草案を作成します。報告書には、得点とその根拠、認証結果についての案、認証有効期間中における漁業の実状改善に向けた条件も含まれます。クライアントには、草案にコメントする時間が与えられます。その後、報告書は修正され、独立した立場にある2人の専門家により査読されます。2人の専門家は修正案の査読結果を文書にて提出します。
漁業へのアドバイス
報告書の草案がステークホルダーに公開される前に、クライアントは最初の草案全体を見ることができます。この報告書草案には、評価ツリーに照らして採点した漁業の得点と結果についての見込みが含まれています。評価指標のいずれかが80以下の得点の場合、漁業クライアントは、この対処について、詳細な合意書あるいはクライアント行動計画を以って認証機関と同意する必要があります。クライアント行動計画は審査報告書案及び最終報告書に含まれます。
報告書が漁業の実態について、事実を確実に捉えたものであることをクライアントが確信し、認証に条件が付されている場合には、その理由を十分に理解していることが非常に重要です。
ステップ5:審査報告書(案)のパブリックレビュー
クライアントと外部専門家によるレビューに引き続き、認証機関はMSCにパブリックコメント用報告書案を提出し、それがMSCウェブサイトで公開されます。MSCはコメントを受け付けるため報告書が公開された旨をステークホルダーに通達します。報告書は少なくとも30日間公開されます。
漁業へのアドバイス
すべてのステークホルダーは、この機会に審査チームの調査結果に対してコメントすることができます。この時点でステークホルダーが意見をしっかりと出していれば、後で異議申し立てをされるリスクは小さくなるので、漁業クライアントとしては、関心を有する関係者に報告書案の内容を確認してもらうことを勧めると良いでしょう。参加を促すという意味で、クライアントは認証機関と協力して、Eメールでステークホルダーに最新状況を伝えたり、関心を持つステークホルダーとの会議を開催するのも良いでしょう。
ステップ6:最終報告書と決定
認証機関は、すべてのコメントの確認・検討を踏まえ対応した後に報告書案を修正し、漁業が持続可能な漁業のためのMSC環境規格を満たし、認証されるかどうかの決定を下します。
認証機関は、MSCウェブサイトへの掲載のため、この報告書をMSCに提出します。MSCは関心を有するすべてのステークホルダーにEメールによってこのことを伝えるとともに、報告書の公開に伴ってウェブサイトを更新します。決定に対する異議申し立ての意志表示は、休日を除く15日間に表明することができます。
漁業へのアドバイス
報告書の内容を十分に確認し、原案からの変更箇所が納得できるものであることを確認してください。
ステークホルダーと緊密な関係が構築されていれば、異議申し立てが行われるかどうかの見当はつくはずです。もしステークホルダーとの間の問題が解決されていなければ、認証機関と共にステークホルダーの懸念を解消し、正式な異議申し立てを回避する最後のチャンスです。
この機会に、認証発行に際しての企画を考え、メディアへの通知についてMSCに相談するのも良いでしょう。
認証が勧告されない場合、審査プロセスにおいて既にその理由は分かっているはずです。たとえ結果が不本意なものであっても、漁業やその操業区域の環境に関する理解は深まったはずです。審査への再申請はいつでも可能です。
ステップ7:公開用認証報告書と認証の発行
休日を除く15日間の「異議申し立ての意思表明」期間に異議申し立てがなければ、漁業は認証されます。認証機関は、年次査察の予定や、行動計画の実施公約を含む公開用認証報告書を発行するとともに、漁業認証登録証をクライアントに発行します。認証有効期間は最長5年で、年次監査を受けなくてはなりません。
漁業へのアドバイス
認証取得を祝すとともに、認証をPRする時です。MSCや認証機関と協力し、認証を取得したことを伝えることが求められます。大きなニュースであり、メディアでの報道とPRの絶好の機会ですから、公式声明を準備しておきましょう。いつ、どこで、どのようにといった広報計画をMSCと共に考えるのが良いでしょう。
認証取得を公表する前に、以下のことを済ましておかなければならないことを留意ください。
* MSCが認証機関から公開用認証報告書を受領していること。
* 認証機関が認証登録証を発行していること。
* クライアントは、査察に係る契約と、認証に付された条件を満たすための行動計画について、認証機関と合意し署名していること。
得点と条件
MSC認証を取得するためには、各評価指標において60以上の得点をあげる必要があります。ひとつでも60点未満のものがあれば、認証は認められません。また、持続可能な漁業のためのMSC環境規格に定められているMSCの3つの原則について、それぞれの総合点が80以上でなければ認証を取得することはできません。
評価指標のいずれかにおいて、漁業の得点が80点に満たなかった場合でも、60点以上であれば、認証機関は一つ以上の条件を付し、認証審査を継続できます。例外的な状況がない限り、認証の有効期間内で認証機関が定めた期間内に条件を満たし、少なくとも80点のレベルまで実状を改善しなければなりません。
認証機関は各条件の達成について適切な期限を定め、クライアントの目指すべき結果や目標を明らかにしなければなりません。認証機関の役割は、クライアントに助言し、求められている成果を明確に理解させることです。
異議申し立て
ステップ7の、休日を除く15日以内の「異議申し立ての意志表示」期間に異議申し立てがあった場合、漁業クライアントはMSCの「異議申し立て手続き」に入ります。審査に関する意見の相違を解消する手段として、この「異議申し立て手続き」があります。話し合いで問題が解決できない場合、客観的立場にある仲裁人が、異議が妥当なものであるかどうかの判断を下します。
小規模及びデータ不足漁業
MSCでは、認証取得を求める漁業に、公平で平等なアクセスを提供できるよう取り組んでいます。詳細なデータが不足している漁業についても、科学的根拠に基づいた確実な認証を可能とすべくプロジェクトを立ち上げ、審査を試行しています。MSCプログラムの特長である確固たる科学的証拠に基づいた審査を維持しつつ、小規模漁業やデータ不足の漁業に対しても認証取得への道を開くことが目的です。詳しくは、こちら(「リスクを想定した審査枠組」)http://www.msc.org/about-us/standards/methodologies/fam/msc-risk-based-framework (英文)をご覧下さい。

