Skip to main content

MSCの最新ニュースをご紹介するプレスリリースです。

MSCジャパンのプレスリリースをメールで受け取りたい方は、 こちらの登録フォームよりお手続きください。

MSC環境インパクト報告書:過去5年間で持続可能な水産物の漁獲量が倍増

MSCのパートナーによる健全な海洋環境に向けた継続的改善への取り組み

2016年の世界海洋デー(ワールド・オーシャンズ・デイ)に発表されたMSCの最新報告書では、認証漁業による適切な管理および改善への取り組みが、混獲の削減や海洋環境に対する科学的な理解の向上など、大幅なプラスの効果をあげていることが明らかにされています。

世界におけるMSC認証天然魚の総漁獲量は、2010年には5%(4,541,358トン)でしたが、2015年には9.4%(8,821,221トン)と、2倍近い伸びを示しています。世界33カ国において281もの漁業が独立した第三者機関による審査を受け、世界で最も認知され、信頼されている持続可能な漁業のためのMSC規準に準拠しているとしてMSC認証を取得しています。
2016年の環境インパクト報告書では、MSCプログラムの発足当時からの進捗状況を定量的に分析した結果を示すとともに、この5年間で大幅に改善した点を明らかにしています。
MSCのCEO、ルパート・ハウズは次のように述べています。「今から20年ほど前、持続可能ではない漁業の問題に取り組み、将来に向けた水産資源を保護する目的でMSCは発足しました。最新の報告書では、MSC認証を取得・維持するために多くの漁業がこれまでに行った努力と革新、投資の結果、そしてMSCプログラムが世界の海洋環境にもたらすポジティブな変革について紹介されています。」

漁業インパクトの軽減

持続可能な漁業認証を維持するなかで、認証漁業のうちの94%が、認証期間中に何らかの業績改善措置あるいはモニタリング強化対策をとっていることが、MSCのデータで明らかになりました。2015年末現在、281の漁業が876の改善措置を完了し、さらなる改善に取り組んでいます。

報告書では、技術や研究、管理の改善により、南インド洋では、より持続可能で選択的な漁獲が可能になったという事例も挙げられています。例えば、ケルゲレン諸島の認証メロ漁業の行った改善措置により、延縄に誤って引っかかってしまう海鳥の数が激減し、昨年報告されたオオハイイロミズナギドリの死亡数はわずか3羽に留まりました。また、アメリカ、ルイジアナ州の認証ブルークラブ漁業は、放置された25,000におよぶトラップを回収し、脆弱なテラピン種へのゴーストフィッシングのリスクを最小限に留めることに成功しました。

MSCの科学・規準ディレクターのデビッド・アグニュー博士は、次のように述べています。「漁獲戦略の改善から、対象種以外の種へのインパクトを軽減するための措置に至るまで、MSC認証漁業は持続可能な漁業管理における課題について、革新的で科学的根拠に基づいた取り組みを推進しています。こうした取り組みによって、世界の水産資源および海洋生態系の保全が着実に、そして永続的に進められていることが最新の報告書で明らかにされています。」

MSCはステークホルダーと連携することで健全な運営を実現しています。第三者独立機関によるMSC認証審査プロセスの中核を成すのがステークホルダーの関与です。2012年から2015年にかけて行われた審査の36%に対してステークホルダーからのインプットがあり、コメントの12.5%が漁業の審査得点に影響を及ぼしたことがこの報告書に示されています。

健全な水産資源

報告書は、過去14年間における北ヨーロッパの漁業資源の持続可能性にも言及しており、MSC認証を取得した漁業のバイオマスもしくは資源量が、非認証漁業よりも増加していることを明らかにしています。これに対して、ヨーロッパの非認証漁業はバイオマスや漁獲圧の変動が大きく、漁業資源の生産性を維持するためには漁獲圧の平均が大き過ぎることが明示されています。
アグニュー博士いわく「MSCが行ったヨーロッパ漁業の資源分析により、認証漁業の取り組みが魚類個体群の保全に貢献していることが実証されました。ヨーロッパのMSC認証漁業の対象資源量は、認証取得前に比べてより豊かな状態にあり、さらに持続可能な漁獲率を維持するようになりました」。

市場供給

MSC認証漁業の支えとなっているのが、持続可能なMSCエコラベル表示の水産物の需要の伸び、そして水産製品のサプライチェーンにおける、MSC水産物の売買を行うための認証を取得している事業者の急増です。2010年には1,099だったMSC CoC認証事業者が2015年には3,000近くにまで増加し、この5年で3倍近い伸びを示し、世界の78カ国にまで及んでいます。

MSC認証を取得した漁業、加工業者の所在地および認証製品の供給元は、水産業界がいかにグローバルなものであるかを示しています。CoC認証事業者が最も多いのが中国で、その大半が加工業者です。しかし一方、認証漁業は北米およびヨーロッパに集中しています。

グローバルな連携を推進

海洋資源を対象とした国連の持続可能な開発目標の14番目の目標は、小規模漁業および発展途上国の漁業が食糧安全保障および経済発展にとっていかに重要であるかを強調しています。MSCの報告書でも、MSCプログラムへの途上国漁業の参加を促す必要性があることを指摘しています。途上国で認証を取得した漁業は現時点ではまだ20にしか達しておらず、15の漁業が審査に入っています。しかし、その数は確実に増加しており、MSCもより容易に認証を取得できるよう、各種ツール、助成金、研修制度を用意しました。

MSCのCEO, ルパート・ハウズは最後にこう付け加えました。「途上国の多くの漁業は緊急に改善もしくは回復する必要があります。これは大きな課題ではありますが、それだけに変革への期待も大きいのです。MSCは途上国の漁業が認証を取得する上での障壁を克服し、適切で持続可能な漁業管理が図れるようサポートしてまいります。」

<<報告書の全文のお読みになりたい方はこちらからダウンロードできます(英語のみ)>>