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ロシア・オホーツ海のスケトウダラ漁業の異議申し立てに関する独立裁定人による最終決定について

独立裁定人(IA)、マイケル・ロッジ氏は本日、At-sea Processors Association(APA)がロシア・オホーツク海のスケトウダラ漁業に対して行った異議申し立てに関する最終決定を行いました。ロッジ氏が認証機関の対応を了承したことにより、本漁業はMSC規準を満たす持続可能で良く管理された漁業として認証される方向に向かうことになります。

MSCの要求事項に則り、異議申し立てプロセスにおいて実施された変更が正確に反映されていることを確認するため、認証機関は裁定人に修正報告書を提出しなければなりません。修正報告書が提出されると、公開用認証報告書がMSCのウェブサイトに公開され、ロシア・オホーツ海のスケトウダラ漁業が認証機関によって認証される運びとなります。認証機関が認証書を発行すれば、ロシアオホーツク海のスケトウダラ漁業の水産製品にMSCの主張文およびエコラベルを表示し、販売できるようになります。

MSC規準担当ディレクター、デビッド・アグニュー博士は次のように述べました。「異議申し立てのプロセスはMSCとは完全に独立した形で行われ、MSCプログラムの中立性および科学的正確さを強調するものです。WWFとAPAが漁業認証に対して異議を申し立てましたが、漁業側が、データの収集に関する計画を改めたことを受け、WWFは今年の始めに異議を撤回しました。APAからの異議に対して、独立裁定人が引き続き検討をした結果、決定の科学的根拠が改善され、対象漁業の行動計画も更に強化されました。今回の異議申し立てに関する最終決定により、対象漁業は認証機関および独立裁定人の双方によってMSC規準を満たしているものと判断されたことになります。MSCは関係者すべての方々によるご尽力、および持続可能な漁業への想いに敬意を表します」。

異議申し立てプロセスが認証に関する決定を強化

手続き上の問題があるとして決定が差し戻されたことを受け、認証機関は、外部査読者および異議申し立て人のコメントを検討し、条件2および審査対象漁業の行動計画を改め、モニタリングおよび監視プログラムの強化を求めることにしました。公開用報告書においては、漁業の全水揚げに関する記録に一貫性および正確性が認められることを実証するために、分析結果に関する報告書を一年以内に作成し、至らないところがある場合には是正計画を策定することが求められることになります。分析結果の報告書はロシア連邦漁業局、ロシア漁業研究機関や世界的な権威者などを含むワーキンググループによって作成されなければなりません。WWFの異議によってもたらされた改善点に加え、これらの追加要求事項により、漁業にとって必要なデータの入手が質、量ともに向上するものと期待されます。

信頼性のある、中立で科学的な結果

MSCは異議申し立てのプロセスおよび結果に直接関わることはありません。最終決定に関して、デビッド・アグニュー博士は 次のように述べました。「異議申し立てプロセスは、MSCプログラムにとって重要な牽制機能を果たすだけでなく、更なる透明性をもたらすものです。これにより、直接の関係者をはじめ、世界の水産市場や消費者は、MSC認証に関する決定が中立なものであり、すべてのステークホルダーの意見を反映し、独立した信頼性のある科学的根拠に基づいたものであり、最も厳しい調査にも耐えられるものであるという確信を得ることができるのです。」

独立裁定人の最終決定の全文は Russia Sea of Okhotsk documentsにてオンラインでご覧いただけます。

異議、および決定差し戻しの背景

MSCの手続きでは、最終報告書および決定に関する協議期間中に異議申し立てを行うことができます。これに則り、ロシア・オホーツ海のスケトウダラ漁業の認証に対して二つの異議申し立てが行われました。一つはWWF、そしてもう一つは米国のスケトウダラ漁業を代表するAt-sea Processors Association(APA)によるものでした。双方とも異議申し立ての手続きを行い、それぞれの申し立てがMSCによって任命された独立裁定人に受理されました。WWFはその後、審査対象漁業である(スケトウダラ漁業者協会:PCA)と条件2, 4, 5の段階を改める合意に達し、正式に異議を取り下げました。独立裁定人は2013年6月19日付けの差し戻し決定の中で、そうした変更点を最終認証報告書の中に含めるよう、認証機関に指示しました。

APAの方は手続き及び得点付けに関する異議申し立てを行いました。独立裁定人は最終決定の中で、パブリックコメント用報告書案(PCDR)と最終報告書の発表の間に行われた得点付けの変更がMSCの認証要求事項の手続きに反するものであり、その結果、審査に重要な相違が生じたのではないか、という手続き上の問題について差し戻しを行いました。得点基準PI 1.2.3は情報およびモニタリングに関するもので、漁獲方策を裏付けるための情報が収集されているかどうかを採点するものです。認証機関は審査結果を変更するにあたり、新たな情報を加えていたのですが、外部査読者やステークホルダーがコメントをする機会を提供していませんでした。独立裁定人は他にも、原則2の生態系に対する漁業の影響を判断する得点基準を中心に、いくつかの得点基準の得点付けについて、報告書のデータでは正当性が認められないとし、認証機関の行った得点付けを差し戻しました。

独立裁定人の指示に従い、認証機関は手続き上の問題を是正するため、外部査読者に情報証拠及び得点付けの根拠を提出しました。このデータは異議申立人にも提出され、更に検討されました。得点付けの問題に関しては、認証機関はその決定の根拠となる、より詳しい情報を提供し、異議申立人もそれについてのコメントを述べました。

独立裁定人のマイケル・ロッジ氏は、最終決定を行う際に、手続き上の問題について14項目にわたるコメントを述べました。「適切な外部査読を行うための努力に加え、最初の決定の中で認められた変則的な手続きに対する問題に対しても対処する努力が十分に認められます。異議申立人は依然として、認証機関の決定の根拠となった証拠の信頼性が乏しい、という主張を行っています。しかし、PI 1.2.3の得点付けを変更する根拠、特にこれに関する外部査読者であるストーク博士のコメントを慎重に吟味した結果、認証機関がこの底曳網漁業からの追加情報を慎重に扱い、得点付けの際にも適切な配慮を行ったと言うことが十分認められるものと判断します。異議申し立て人のコメントからも認証機関が独断的で不合理な得点付けを行ったことをうかがわせるものは何もありません。」得点付けについて、独立裁定人のマイケル・ロッジ氏は最終決定の中で、認証機関の回答、および異議申立人のコメントを吟味した結果、異議申し立てのあった得点付けについても何も問題がないという決定を下したとし、その最終決定の中に次のように記しています。「審査プロセスでは、認証機関は特定の要求事項の解釈に関するMSCのガイダンスを考慮した上で、入手可能なデータや情報を基に、専門的判断を行わなければなりません。認証機関が入手可能なデータをどのように取り扱ったかについての詳細な分析など、提案された得点付けの変更の根拠を吟味した結果、独断的で不合理な得点付けが行われたものではない、という判断に至りました」。

これまでの経緯

認証機関インターテック・ムーディー・マリン(Intertek Moody Marine)により、科学的でステークホルダー参加型の漁業審査が実施され、その結果、2013年1月22日に漁業に関する最終報告書が発行され、MSC認証を授与する旨の決定がなされました。2月にWWFおよびAPAによる異議申し立てが行われましたが、WWFは4月に異議を退け、認証機関は条件2、4、5に関する段階の変更に関する合意を盛り込んだ最終報告書の改訂版を発行しました。残るAPA の異議申し立てに関しては、5月に公聴会が行われ、独立裁定人はAPA提供の情報およびFCRの記録に基づき、認証の決定を認証機関に差し戻しました。認証機関はそれを受け、異議申し立てのあった問題を改善するため、条件2の強化に努めました。2013年9月16日に独立裁定人は認証機関の措置が差し戻しに対する要求事項を満たしているとする、異議申し立てに関する最終決定を下しました。

MSCの異議申し立てプロセス

MSCの認証プログラムでは、審査の最終ステップにオプションとして異議申し立てプロセスを設けています。これにより、もしステークホルダーから認証決定に対する異議があった場合には、秩序ある、体系化された透明で独立したプロセスにより、認証機関による決定の見直しができるようになっています。独立裁定人は、認証決定の結果に重大な影響を及ぼすような間違いが認証機関側にあったかどうかを調査します。異議申し立てプロセスは漁業の再審査ではありません。独立裁定人は提出された情報を基に異議申し立てに関する決定を行い、その際に今回のように公聴会での意見を参考にすることもあります。