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低次栄養段階種対象の漁業に関する研究が認証機関に貢献

国際的な週刊の科学ジャーナル「サイエンス」のオンライン版に、画期的な科学的な分析報告書「Impacts of fishing low trophic level species on marine ecosystems (仮訳:海洋生態系における低次栄養段階の種(食物連鎖下位層種)(以下LTL)を対象とする漁業の影響)」が発表されました。この研究は、LTL漁業を審査する認証機関に対するMSCのガイダンスが国際的な最高基準に適合するかどうかを保証するために、MSCの提案と実質的な資金提供により行われました。

30パーセント以上の世界の水産生産は、アンチョビ、イワシ、イカナゴのような被捕食・浮魚資源です。これらの海洋生態系における低次栄養段階の種は、特に発展途上国の食料安全保障において重要な役割を果たしており、ペルーのアンチョビ漁業のような世界でも大規模な漁業により漁獲されています。これらの魚は、また、広範囲のエコシステム(生態系)において、重要な役割を果たしており、責任ある漁業マネジメントの体制における、持続可能なレベルで依存種を維持することのできる漁獲計画の必要性が認識されています。

MSCのコンサルテーションが世界的な専門的知見に貢献

2009年の9月に、MSCは「低次栄養段階種漁業の管理における世界的最高規範の検証と、MSCの漁業認証審査方法(FAM)におけるそれらの漁業の審査レビューを行う、12ヶ月にわたるコンサルテーションを開始しました。

このコンサルテーションのほかに、広い分野の国際的な海洋専門家と協力し、MSCは、漁獲方策の違いがLTL種とそれらに依存する捕食種に与える影響を評価するモデル作りを、国際的な研究者グループに依頼しました。

この研究は、オーストラリア公共利益科学および産業調査機関(CSIRO)のトビー・スミス博士が指揮し、3つのタイプのエコシステムモデルを使い、エコシステム・ダイナミクス(海洋生態系力学)の理解が進んでいる5つの異なった地域の評価を行いました。これらのモデルを用い、LTL種の異なる漁獲方策がどのように漁獲対象種や捕食者(これらを食料としている種)に影響を与えるのかが評価されました。

より高い資源量がエコシステムへの影響を最小限にする

このたび発表された調査結果は、これらの重要な種が、漁獲が行われなかった場合の資源量に対して40パーセントのレベルでのが漁獲が、特に、もしこれらの種が、食物連鎖内ににおけるつながりが強く、エコシステムのバイオマス(生物資源量)の多くの部分を占めている場合には、エコシステムに重大な影響が与える恐れを示しています。さらに調査結果は、特定の状況下では、より予防的なレベルでの漁獲-漁獲が行われなかった場合の資源漁の75%レベル-が、エコシステムへの影響を最小限に抑えるために必要であると示しています。高い資源量を保つことで、20パーセント以上漁獲を減らさずに、エコシステムの他の生物種を守ることができます。

この研究によって、エコシステムにおける比較的豊富な資源量と食物連鎖におけるLTL種との関連性の強さが、漁獲が引き起こす影響を左右する重要な要因であることがわかりました。4パーセントかそれ以上の割合で食物連鎖網に高い関連を持つLTL魚が枯渇することは、常に多大な影響をもたらします。

持続可能な成果を強化するための新ガイドライン
現在のMSCの漁業認証審査方法(FAM)は、すでにエコシステムにおけるLTL種の重要性を認識しています。現在、そのようなLTL魚を漁獲する漁業は、他の種の漁業に期待されるよりもより多くのバイオマスを海に残すために、保全的漁獲計画が必要とされています。この画期的な研究結果によって、MSCは、LTL漁業特有の必要事項を明確にすることができます。このLTLガイドラインは、現在策定の最終段階にあり、8月に発表される予定です。

MSC規準のディレクター、デイビッド・アグニュー博士は、「漁業資源の健全性と海洋生態系を維持するために、効果的な漁業管理システムが最も重要です。MSCの技術的方針は確固とした科学に基づいています。スミス博士と研究チーム、この研究にご協力いただいた科学者と関係者に感謝申し上げます。この研究は、今後のLTLの管理と評価に関して大きな影響をもたらすことになります。

このMSCのプログラムは、ダイナミックなものです。新しい方針ーが導入されるとき、わたしたちはそれが広範な科学的な合意を反映しているものかどうか、またすでにほとんどの責任ある漁業管理体制において取り入れられているものかどうか確認します。海底の影響や空間マネジメントに関する研究等により将来ポリシーが変更される場合は、新LTLガイドラインの策定で適用されたように、同様に透明性があり厳格なプロセスによって導入されます。

low trophic level species,  LTL種、 食物連鎖下位層魚などの呼び方もあり、MSCでは通常小型で、より大きな種に捕食される資源をこのように表現しています。捕食され飼料となる種の殆どは低次栄養段階種に属しますが、その全てが飼料魚であるとは限りません。