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持続可能なヘイク漁業、南アフリカの経済と環境に長期的便益をもたらす

  • 持続可能な漁業によって、12,000人の雇用が守られる。
  • イギリス、ドイツ、スイス、スウェーデン、オーストラリアにおいて持続可能な水産物市場を開拓することにより、新たに1.87億米ドルの輸出市場を獲得。
  • 野鳥保護において多くの実績を誇るアルバトロス・タスク・フォースの活動により、海鳥の死亡率が90%減少。
  • 南アフリカ沖の遠洋における底生動物相に関する画期的な研究。

 

持続可能な漁業として海洋管理協議会(MSC)認証を取得してから10年、南アフリカで最も歴史のある漁業が、持続可能な漁業がもたらす便益は、環境だけではなく経済へも及ぶということを実証しました。

南アフリカのヘイク漁業がMSC認証を取得したことによって、長期にわたる経済効果と環境改善の効果がもたらされていることが独立機関による最新の研究によって明らかになりました。漁業を適切に管理し、活性化を図ったことで、水産業に従事する12,000人もの人々の雇用が保護され、持続可能な認証水産物への需要が伸びた結果、輸出額は1.87億米ドルにまで増加しています。また、より環境に配慮した漁法を取り入れたことにより、海鳥の死亡率を90%削減することに成功しただけでなく、ヘイクの自然保護区の保全、そして政府の漁業管理者や科学者、水産業界との円滑な協力関係をもたらしました。

持続可能な天然漁業の認証および認証漁業由来の水産物のエコラベル・プログラムであるMSCの認証制度。MSC認証を取得するには世界で最も厳格な環境認証要件をクリアしなければなりません。南アフリカのヘイク漁業は2004年に初めてMSC認証を取得し、2010年に再認証されました。環境を改善し、持続可能な漁業として存続し続けるための取り組みは、南アフリカの水産資源の保護、および活力あふれる漁業経済と海洋生態系の維持に貢献しています。

漁業経済の保護と新たな市場の開拓

南アフリカのヘイク漁業では、8,000人を超える男女を雇用し、年間約1.87億USドルの輸出収益をあげています。MSC認証を取得したことで、持続可能な水産物調達への高まりを見せる英国やドイツ、スイス、スウェーデン、オーストラリアといった新たな輸出市場の開拓につながったということが、独立第三者漁業コンサルティング・グループであるOLRACおよび南アフリカ経済研究所Bureau of Economic Research(BER)が独自に行った経済調査によって明らかになりました。

調査結果では、認証取得がなければ、南アフリカのヘイク底引き網漁業の正味現在価値(NPV)が5年間で推定35%減少し、その結果、漁業のGDPへの貢献度は28〜47%減少、漁業および関連産業において12,000人が職を失う可能性が示されています。

アフリカ底層トロール漁業連合(SADSTIA)の事務局長、ロイ・ブロス氏のコメント

「漁業セクターではMSC認証による市場からの恩恵を肌で感じています。環境改善についても達成感があり、大変誇りに思っています。MSC認証によって、私たちの漁業の業績を実証することができるので、いずれはすべての底引き網漁業が認証による市場拡大の恩恵を享受できるようになるものと確信しています」。

海鳥の死亡率の減少

南アフリカのヘイク漁業では、認証時に付けられた条件を満たすために、海洋環境の大幅な改善に取り組み、実績を残しています。そうした改善措置のひとつが鳥除け縄の設置です。バードライフ南アフリカ(Bird Life South Africa)が先日発表した7年越しの調査結果では、南アフリカのヘイク底引き網漁業がこうした海鳥の混獲回避策を講じたことで、海鳥の死亡率が90%減少し、中でもアホウドリの死亡率は99%まで激減したとされています。

これは海洋生物の保護における驚くべき成果ですが、すべての始まりは2004年の認証取得の際に条件が付けられたことに遡ります。この条件を満たすために行った調査で、年間10,000羽もの海鳥が混獲によって死亡し、そのうちの70%がアホウドリであることが判明したのです。バードライフ南アフリカ(BirdLife South Africa)は、その回避策として鳥除け縄の設置を推奨し、政府の支援を受け、漁業と恊働してその効果を科学的に解明する研究をスタートさせました。

バードライフ南アフリカ(BirdLife South Africa)のアホウドリ・タスクフォースのリーダー、ブロンウィン・マレー氏のコメント

「私たちは、海鳥の混獲防止が環境だけでなくビジネスにとっても有益であることを実証するために認証漁業と密接に恊働して参りました。これまでの成果はMSC認証なくしてはなし得ないことでした」。

マレー氏は先日、海鳥の保護におけるその業績が評価され、権威ある2014年フューチャー・フォー・ネイチャーFuture for Nature (FFN) 国際アワードの受賞者に選ばれました。

生態系の保護

認証による環境改善の効果としてもう一つ意義深いのは、ヘイクを含む底生性魚種生息域への漁業インパクトに関する継続的な調査です。

MSC認証を維持するための条件であった改善措置を講じるため、SADSTIAでは入手可能な最良のデータを基に、これまで集中的に漁が行われてきた地域を含む底引き網漁場の地図を作成し、あまり使われていない漁場へのダメージを防ぎ、ヘイクの自然保護区域を保護するために漁場を囲むことにしたのです。

南アフリカ西海岸、大西洋岸沖100海里の海域においても画期的な研究調査が行われています。南アフリカの底引き網漁業連合は、漁業が行われなかった場合の生態系の回復をモニタリングするため、一部の海域において少なくとも4年間休漁することに合意しました。底引き網漁実験は、漁業セクターと南アフリカ環境観測ネットワーク(SAEON)、ケープタウン大学(UCT)、 南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)、および南アフリカ農林水産省(DAFF)による共同プロジェクトです。これは、環境への影響を軽減し、認証条件を満たすために漁業セクターが積極的に多様なステークホルダーとコラボレートしようとしていることを表すものです。

 南アフリカ環境観測ネットワーク(SAEON)プロジェクトマネージャー、ララ・アトキンソン氏のコメント

「MSC認証により、ステークホルダー間の協力関係が育まれたことでこの実験がスタートしました。底引き網漁の休漁期における生態系での変化を観測する機会を得ることができたことはたいへん喜ばしいことです」。

継続的な変化

 認証は継続的な変化をももたらしています。南アフリカでは、生態系を基にした責任ある漁業管理を目指すために、科学者やNGO、漁業セクターとが緊密に恊働するようになりました。先日、南アフリカを代表する海洋科学者たちがThe Journal of Fish Biology(魚類生物学の専門誌)に発表した研究結果によると、MSC認証に付帯する条件が生態系の研究に拍車をかけ、生態系への影響を緩和することに成果を上げているそうです。そうした成果のひとつが、漁業セクターがかかえる課題への対策です。底生生息域への底引き網漁の影響に関する研究、海鳥の混獲、対象種以外の混獲回避、および資源評価の考え方などがその例として挙げられています。

 MSCの南アフリカ担当マネージャー、マーチン・パーブスのコメント

「MSCのビジョン、それは今も、そしてこれからもずっと世界の海が生命に溢れていることです。南アフリカのヘイク漁業は、MSCの掲げる変革の理論を見事に実証しています。環境に対して責任ある行動をとっている漁業者は報奨され、市場における経済的利益を享受すべきです。一方で、認証漁業の長期にわたる持続可能性のためには環境への改善効果を明らかにしなければなりません。解決策を見出すために、漁業セクターと科学者、政府機関およびNGOがコラボレートしたことで、比較的短い期間で大きな環境改善を達成することができたのです」。

MSCと南アフリカのヘイク漁業などのパートナーが海洋資源の持続可能性のために恊働する映像はこちらでご覧いただけます: https://www.youtube.com/watch?v=bw5tsy05uM8

 

報道関係者からのお問い合わせ:詳しくはMSC日本事務所にメール([email protected]) もしくは電話 (03-5623-2845)までお問い合わせください。

・OLRAC

南アフリカを拠点とするOLRACは、最新の定量的科学技術などを漁業セクターに提供すると共に、経済性や漁業のおかれている現状を考慮した上で、漁業管理者に提言を行っています。

・南アフリカ経済研究局BER) (www.ber.ac.za)

南アフリカで最も歴史のある経済研究所のひとつである南アフリカ経済研究局(BER)は、その独立性と客観的で権威ある経済研究や予測において国内外での定評があります。

・バードライフ南アフリカ (www.birdlife.org.za)

バードライフ南アフリカのミッションは、野鳥およびその生息地の楽しみ方、保護、研究および理解を育むことです。南アフリカ最大の野鳥保護NPOです。

バードライフ・インターナショナルは、底引き網漁や延縄漁の混獲による世界的なアホウドリの捕獲および死亡を減ら取り組みの中心的役割を果たしてきました。2006年にはアホウドリ・タスクフォース(ATF)を設立し、バードライフ南アフリカを起点に活動を開始しました。ATFは海鳥の混獲に関する革新的な解決策を見出すために漁業者および政府と手を携えています。

バードライフ南アフリカは、南アフリカにおけるトリ除け縄の設置を義務づけるために、南アフリカのヘイク底引き網漁業および政府、WWFと恊働しています。Ocean View Association for Persons with Disabilities (OVAPD)という障害者団体が縄の製造を行っています。

南アフリカ遠洋トロール漁業連:SADSTIA www.sadstia.co.za)

SADSTIAは、南アフリカでトロール船を所有もしくは操業する漁業者の連合です。南アフリカ遠洋トロール漁業セクターの公認団体として、政府やNGO、その他のステークホルダーと協議を行っています。SADSTIAとその関連団体は、遠洋トロール漁業セクターのすべての漁業者を取りまとめており、南アフリカヘイク漁業によって水揚げされたヘイクの100%を漁獲しています。SADSTIAは会員によって運営され、管理は執行委員会に委ねられています。会長、および/または副会長、事務局長が日々の管理に当たっています。

・フューチャー・フォー・ネイチャーwww.futurefornature.org

フューチャー・フォー・ネイチャーは、野生動物や植物の保護に対する強い想いを持った若く才能ある自然保護運動家を支援しています。彼らの想いが自然の未来に希望を与え、その指導力は地域や団体、政府、投資家、および一般社会に動機を与え、行動を起こします。

自然保護活動を牽引する優秀な若手を奨励するイベントとして、権威あるFuture for Nature賞の授与式を例年開催し、また若い保護活動家たちの研究や教育を支援し資金面での助成を行うためのネットワーク作りにも取り組んでいます。

バードライフ南アフリカのアホウドリ・タスクフォースのリーダー、ブロンウィン・マレー氏(Bronwyn Maree)は、2013年Future for Nature Awardの候補者にノミネートされ、2014年にはこの栄えある賞を授与されました。