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科学者と水産業界の「キーストーン・ダイアローグ」で海洋管理が大きく前進

科学者と企業のリーダーたちによる初めての「キーストーン・ダイアローグ」を経て、世界最大の水産企業8社が10項目からなる海洋管理への取り組みを宣言しました。

持続可能性に向けたグローバルな取り組みに大手多国籍企業が関与するための新たな試みとして行われた「キーストーン・ダイアローグ」の結果、各企業は自社のサプライチェーンの透明性とトレーサビリティを向上させ、違法、無報告、無規制の(IUU)漁業を削減することを誓いました。

また水産業における抗生物質の使用削減、温室効果ガス排出量およびプラスチック汚染の削減についても優先的に取り組むことになりました。更に、「現代の奴隷制ともいえる強制労働、債務返済労働、児童労働」による製品をサプライチェーンから排除することも宣言しました。

宣言文には、署名者が「水産業界を代表する者として、業界の経営だけでなく、地球の回復力に対しても国際的な影響力を持っている」という文言があり、署名欄には世界有数の売上げを誇る2社 (マルハニチロ株式会社と日本水産株式会社)、マグロ類の最大手加工企業2社(タイ・ユニオン・グループPCLとドンウォン・インダストリーズ(東遠産業))、サーモン養殖加工企業の最大手2社(マリーン・ハーヴェストASA と三菱商事の子会社であるセルマック)および水産飼料の最大手2社(ニュートレコの子会社であるスクレッティングとカーギル・アクア・ニュートリション)が名を連ねています。

この取り組みを実践するため、署名企業は天然漁業と養殖業、ヨーロッパと北米、アジアの企業、そしてビジネスと科学とを結びつける史上初のグローバルイニシアチブ、Seafood Business for Ocean Stewardship 「海洋管理のための水産事業」を立ち上げることになりました。

ストックホルム・レジリエンス・センターの呼びかけによる1回目の会談は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進するグローバル大使に任命されたスウェーデンのヴィクトリア皇太子殿下の後援を受け、11月11日から13日にかけて、モルディブのソネバフシ・リゾートで行われました。これは、大手水産企業のCEOないし幹部と、ストックホルム・レジリエンス・センターを代表する科学者が一同に会するというこれまでにない会談でした。また、米国国務省より米国海洋科学特使でオレゴン州立大学教授のジェーン・ルブシェンコ博士、サンフォード株式会社CEOのフォルカー・クンチ氏、海洋管理協議会(MSC)のCEOルパート・ハウズ、および駐日スウェーデン大使マグヌス・ローバック閣下らがアドバイザーとして列席しました。

宣言文には「人類の発展にとって、安定した、回復力のある 地球環境は不可欠なことです。しかし、いまや人新世(アントロポセン) 、つまり人類が地球の安定と海を脅かす時代に入っているという科学的根拠があります」という文言が含まれています。

この会談は科学者と「キーストーン・アクター」との初の会談となりました。このキーストーン・アクターという言葉は、ストックホルム・レジリエンス・センターの科学ディレクター、カール・フォルケ博士 とヘンリク・オステルブロム博士がキーストーン種を基に作った造語です。キーストーン種は生態系において比較的少ない生物量でありながらも、生態系の構造と機能を決定する重要な役割を担っています。大手多国籍企業はそうしたキーストーン種と同じく、海洋や熱帯雨林等の生態系に対し、ますます大きな影響力を持つようになってきているのです。

オステルブロム博士は世界の海洋におけるキーストーン・アクターを明らかにするための研究チームのリーダーを務め、天然漁獲量の11~16%、そして最大かつ最も価値ある漁資源の40%を占める13の多国籍企業を明らかにしました。

オステルブロム博士は次のようにコメントしています。「私たちは信頼関係および海洋の状態に対する共通理解を培うために、これらの企業のリーダーの方々を話し合いの場に招いたのです。」

また、「多くの企業が招待に応じてくださったことを大変うれしく思います。これは、彼らがこのことについて急を要する事態であることを認識しておられ、その改善に向けて取り組む意思があることを表すものです」とも述べています。

米国の科学者グループが行った関連の研究結果が、2016年に発表されましたが、その研究では、グローバルな漁業管理を適切に行えば、今の方向性を変えない場合と比べて、年間漁獲量が1,600万トン以上増加し、収益も530億ドル上昇する可能性があるとしています。

出席者のコメント

ストックホルム・レジリエンス・センターの理事長、ヨハン・ロックストローム博士は次のように述べました。「少数の多国籍企業が多大なる影響力を持っているということは、水産業界全体をより持続可能な慣行を行うよう転換させる上で、その少数のCEOが大きな鍵を握っているということです。」

英国を拠点に活動するForum for the Futureの創設者兼理事長のジョナサン・ポリット氏は次のようにコメントしました。「世界の海を守るために、水産業界のグローバル・リーダーによるこうした不可欠な取り組みを目の当たりにして大いに勇気づけられました。こうした世界有数の科学者と人に刺激を与えることのできる企業のリーダーの協働は実に強力なパートナーシップでありますが、今後数年間で更に強化していく必要があることは間違いありません。」Forum for the Futureは会談の実現に向けて、中心的な役割を担った団体です。

海洋管理協議会の最高責任者、ルパート・ハウズは次のように述べました。「この『キーストーン・ダイアローグ(キーストーンアクターの会談)』の設立が及ぼす効果は、たいへん大きなものだと考えます。設立の署名文書においては、資源に限りのある地球の人口が増加していく中で、タンパク源の供給増加に貢献するために、人類が直面している深刻な問題を認識し、持続可能な開発目標(SDGs)を支持し、可能な限りのことに協働して取り組むことが宣言されています。これは真に偉大な業績であり、問題に対するソリューションの提供を加速し、これらの企業、そして業界全体が将来においても継続的に再生可能で持続可能なタンパク源を提供できる環境を創成するための新しい、共同の、産業主導型の活動の始まりなのです。この輝かしい対話に参加できたことを大変光栄に思うとともに、MSCは、これらの企業が今後進んでいく道程においてその支援と評価を行っていく所存です。」

こうしたコメントを受け、ストックホルム・レジリエンス・センターの博士号候補学生であり、イベントの共催者でもあるジャン・バプティスト・ジュフレイ氏は次のように述べました。「CEOは、水産物の持続可能な管理によって生まれるビジネスチャンスおよびその必然性の意識を高めることを最優先課題の1つとするべきです。」

カーギル・アクア・ニュートリション会長のEinar Wathne 氏は次のようにコメントしました。「このイニシアチブは東西にまたがる実にグローバルな視点の上にたっています。国連の持続可能な開発目標を指針としながら、海洋や海洋生態系における課題に取り組む際に、大きな影響力となりうるものと期待しています。」

科学とビジネス間の会談と対話は継続的に行われます。次回の会談が来年開催されることが既に決定しており、そこでは、より具体的な協働について話し合われることになります。

会談に参加し、宣言に署名した企業

マルハニチロ株式会社
日本水産株式会社
タイ・ユニオン・グループ
マリーン・ハーヴェストASA
Dongwon Industries
ニュートレコ(スクレッティングの親会社)
カーギル・アクア・ニュートリション
セルマック(三菱商事の子会社)

本イニシアチブとその科学的根拠の詳細について:

www.keystonedialogues.earth
www.stockholmresilience.org
www.gedb.se
www.beijer.kva.se