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開発途上国の漁業がMSCエコラベルへ向け始動

ロンドン―海洋管理協議会(MSC)は、小規模でデータ不足の漁業のMSCの環境認証制度への参加を 促進するプロジェクトが、アフリカと南米の4つの漁業によって開始されたことを歓迎する。今後 さらに4つの漁業が加わる見込みとなっている[1]。このプロジェクトでは、漁業がMSCの基準を満 たすか否かを、限られた科学データによって論証できるよう考案されたMSCの新たな技術ガイドラ インが用いられる[2]。成功すれば、途上国からのMSC制度への参加を増やす道が開かれることにな るだろう。
 
「エコ認証水産物への需要は世界中で高まっています。MSC制度による認証は、これらの漁業に取 引の場を与え、その地域に長期的な社会、環境、経済的利益をもたらすことを可能とします」と、 プログラムを主導するMSCの開発途上国プログラム・マネジャー、Oluyemisi Oloruntuyiは述べて いる。
 
この試みに参加する漁業は以下のとおり:[3]

  • モーリタニア、バンダルギン国立公園のボラ漁業
  • ガンビア、沿岸およびガンビア川のヒラメ漁業
  • アルゼンチン、サンボロンボン湾のボラ漁業
  • エクアドルとペルーのシイラ漁業

 
新ガイドラインでは、審査に必要となる主要環境指標のための十分かつ完全な科学データが不足し ている場合のためのリスク評価が導入されている。標準のMSCの手法では、科学データに基づいて 適切で客観的な漁業審査が行なわれるが、今回の試みに参加する漁業のような多くの小規模漁業で は、広範なデータを示すことができない。この新たな方法によって、MSC制度の科学的な厳密さを 維持しつつ、小規模で情報が不十分である漁業にMSC認証取得への道を提供することを目指す。
 
2005年以来、MSCでは、新たにリスクベースの手法を開発するため、ワークショップや協議を通し て専門家の意見を収集してきた。これは、漁業審査における現行のMSCの手法を補完するものであ り、MSCの「Guidelines for the Assessment of Small-Scale and Data-Deficient Fisheries(小 規模および情報不足漁業の審査のためのガイドライン)」プロジェクト[5]の一環として、認定を 受けた独立認証機関により試行される。
 
 「MSC認証の有力候補でありながら、従来型の科学的情報を用いることではそれを実証することが できない漁業が多くあるということを聞いていました。そこで我々は、そうした漁業でも実証し得 る方法を模索しました。新たな審査ガイドラインは、開発途上国の漁業の参画を容易にしつつも、 MSCの堅固な基準を維持するものです」と、Oluyemisi Oloruntuyiは語る。「これらの漁業がMSC基 準の認証を取得すれば、世界中で増加している環境政策を重視する加工業者や小売業者に、その漁 獲物を販売することができるようになります。このプロジェクトは、開発途上国における漁業コミ ュニティーの生活を向上させることができるのです」。

国際自然保護連合(IUCN)は、モーリタニアのボラ漁業の共同管理を、生態系的手法に則って支援 している。IUCNの技術顧問、Matthieu Bernardon氏は、この試みへの当該漁業の参加決定について 説明する:「イムラゲンの漁師たちは、バンダルギン国立公園のボラ資源を、責任を持って、生態 系への影響を最小に留めて利用しています。帆船で漁場へ行き、足を使ってボラの群れを囲い込む 伝統的な漁法です。MSCラベルは、この漁師たちの環境的に優れた漁業を示す手段として、信頼の おけるものだと思っています」。
 
ガンビアArtisanal Fisheries Development Agency局長、Ousman Bojang氏は、ガンビアのヒラメ 漁業について、「世界中の消費者がますます環境上適正に獲られた水産物を求めています。ガンビ アのヒラメ漁業はそれに応えることができ、MSC認証を取得すれば新たな顧客を惹きつけることに なるでしょう」と述べた。
 
ラテンアメリカで持続可能な漁業の推進を目指すNGO、CeDePescaの保護地域および漁業担当者、 Mariana Nancy Leiva氏は、サンボロンボン湾のボラ漁業についてこう語った:「私たちは漁師と 協力し、持続可能な漁業管理に関する彼らの知識を増やすとともに、参加モデルによって漁業管理 を向上させるよう努めています。MSCによるこの新たな試みが、この小規模な漁業において、最良 の操業を促進し生活を保障することを心から願っています」。
 
CeDePescaの会長、Ernesto Godelman氏は、シイラ漁業の試験審査について次のように語る:「こ の漁業の管理と研究の改善のため、エクアドルとペルーで多くの利害関係者が協力しています。多 くの管理者、研究者、漁師、輸出業者、NGOなどが審査プロセスへ参加を決め、この漁業の認証水 準達成に尽力するようになっています」。
 
WWFアメリカの地域漁業プログラム・ディレクター、Meredith Lopuch氏談:「データの乏しい漁業 の審査に対するMSCの新たな対処法により、エコラベルは持続可能な地域漁業にとってより身近な ものになります。開発途上国の漁業は世界の食糧供給の多くを占めており、認証への機会は、大規 模で産業化された漁業と同等であることが重要です」。
 
他のMSC基準漁業審査と同じく、審査は独立の認証機関によって行われる。利害関係者からのイン プット、特に地域社会によるインプットは、漁業関連および生態学的知識の収集にとっては重要で あり、それによって審査チームは、漁業活動が生態系に及ぼす影響を評価することができる。今回 の試みが成功すれば、リスクベースの手法の採用がMSCの運営組織に提案され、当該漁業はその方 法によってMSC基準認証を受けられることになる。
 
以上
 
 

詳細:

[email protected]

MSC報道責任者、電話 +44 (0) 20 7811 3300 
 

編集の方への注釈:

[1] 4つの漁業の内訳は、開発途上国の漁業2例と、先進国の小規模/情報不足漁業2例です。これ は、開発途上国と先進国の漁業に対応できる新たな技術的ガイドラインの広い汎用性を示していま す。

[2] 正式なプロジェクト名は、「Guidance for the Assessment of Small-Scale and Data- Deficient Fisheries(小規模および情報不足漁業の審査のためのガイドライン)」(GASSDD)で す。

[3] この4つの漁業に加え、ベトナム、ベンチェのミスハマグリ漁業が、現在、標準、および新し い審査法の両方でMSC基準審査を受けており、これによって両プロセスの結果が比較可能になりま す。

[4] これまでのところGASSDDプロジェクトの活動には、Hivos and Commonweal Foundation、 Resources Legacy Fund、そしてイギリスの私的財団より資金援助が寄せられています。