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MSC漁業認証規準の改訂版を発行 ~2015年4月1日より改訂規準を適用~

海洋管理協議会(MSC)の持続可能な漁業認証規準の改訂版がこのたび発行されました。

MSC漁業認証規準の要求事項v.2.0には、水産科学および漁業管理の最新情報が反映されています。この作成に着手したのは2年前で、その後、幾度も検討を重ね、水産業界の専門家、科学者、NGO、そしてMSCの多岐にわたるパートナー企業との1年に及ぶ協議を経てようやく完成しました。これには世界各国の70以上の関係者の専門知識が盛り込まれています。

海洋資源の保護のための最新の方策

改訂規準では、混獲の軽減、脆弱な海洋生態系、強制労働といった重要な課題に関する基準がこれまで以上に高く設定されています。これらに則った認証を取得することで、その漁業が海洋資源を保護し、漁業者の生計を永続的に存続させるための最新の方策を実践していることの証となります。

適用までは6ヶ月

認証機関には、改訂規準を理解し適用するための期間として6ヶ月が与えられます。2015年4月1日以降にMSC認証審査に入る漁業は、改訂規準に則り審査を受けることになります。既に認証を取得している漁業につきましては、2017年10月1日以降の再認証審査から新規準が適用されます。

MSC規準ディレクターのデイビッド・アグニュー博士は、規準の改訂について次のように説明しています。「この規準改定は、MSCにとって大きな飛躍を意味します。これまでよりも更に厳格で信頼性の高いプログラムを確立することで、世界の海が健全になるために前向きで永続的な貢献を成し得るのです。」

改訂内容10項目

1)    脆弱な海洋生態系(Vulnerable Marine Ecosystems: VME)に対する特別な配慮によって生態系を確実に保護。

2)    同じ海域で操業する複数のMSC漁業が、混獲種に対して累積的な悪影響を及ぼすリスクがなくなる。

3)    漁業は、不要な混獲種の死亡率を軽減する可能性のある方法を定期的に検討する必要がある。

4)    MSC漁業がサメのフィニング(ヒレだけを取り、残りの部位を海に廃棄する行為)を行っていないことを保証するための要求事項の強化。

5)    6年間におよぶステークホルダーとの協議の結果として、サケ増殖漁業を審査するためのまったく新しい規準を導入。

6)    生息域の審査のための新しいリスク評価に基づく審査枠組み(Risk Based Framework: RBF)が、限られたデータしか存在しない場合に使用可能。

7)    漁業クライアントの年次監査/再審査コスト負担を軽減するために、年次監査および再審査への要求事項を改訂。

8)    より効果的で標準化された外部査読が行えるよう、独立したピア・レビュー・カレッジ(外部査読者確保のための管理機構)を設立。

9)    漁業からサプライチェーンまでのトレーサビリティをより確実なものにするために、新たな要求事項を追加。

10) 強制労働をさせたとして起訴された企業は、MSC認証を取得する資格がない。

多方面の関係者の意見を包括

アグニュー博士は、「持続可能な漁業のためのMSC規準は、海洋資源および海洋環境に対し、責任ある持続可能な漁業が営まれていることを確実にすることで、漁業者および海洋環境のいずれもが恒久的に便益を享受できるようにするために開発されました。新たな研究によって海洋生物および水産科学への理解が進む中、科学的な根拠に基づいたMSC規準の厳格性とその効果と信頼性を維持することは不可欠なことです。」とし、また、「 漁業規準の見直しには漁業管理当局をはじめ、海洋生物学者、NGO、自然保護活動家など、多岐にわたる関係者が携わりました。理解しづらい部分を明解にしていくプロセスを通じて、すべてのステークホルダーが誇ることのできる規準が完成しました」とも述べています。

漁業規準の検討(Fishery Standard Review: FSR)および審査所要時間と費用に関する検討(Speed Const Review: SCR)による変更は、MSC認証要求事項v2.0に盛り込まれています。独立第三者認証機関は、これを利用してMSCプログラムに参加している漁業の持続可能性を審査することになります。

FAO(国連食糧農業機関)とISEAL(国際社会環境認定表示連合)の規準に適合

新たな認証要求事項によって、MSC規準はこれまでと同じように水産科学および漁業管理の国際的な最良事例を満たすことになります。漁業規準のレビューにおいても、引き続きFAOの定めるエコラベル・ガイドラインおよびISEALの規準設定規範に合致するものとなっています。

新たな漁業認証規準の詳細および変更項目の全容についてはこちら(http://www.msc.org/about-us/standards/fisheries-standard/certification-requirements/fishery-certification-requirements-v2.0)のサイトをご覧いただくか(現在、英語版のみ)または [email protected] までお問い合わせください。

本件に関する報道関係者の問い合わせ先:MSC日本事務所 広報担当 牧野[email protected]


MSC 漁業認証要求事項 v.2.020の主要ポイント

1)    MSCでは、公開協議、ステークホルダー向けワークショップ、方針の策定などについて2年をかけて見直しを行い、漁業認証規準および審査プロセスを改訂し、漁業認証要求事項v2.0(FCRv2.0)を発行することになりました。

2)    この見直しは、オープンで透明性あるプロセスで行われ、水産業界、科学者、自然保護団体の代表など、MSCの多岐にわたるステークホルダーネットワークが、その専門知識を集結しました。

3) FCRv2.0は、認定された第三者認証機関が、MSC規準に則って漁業を審査する際に適用されます。新たに発行されるのは、一般的な認証要求事項(the General Certification Requirements:  GCR)、漁業認証要求事項(the Fisheries Certification Requirements: FCR)、漁業認証要求事項へのガイダンス(Guidance to the Fisheries Certification Requirements: GFCR)およびMSC-MSCIの用語集です。

4) 2014年10月1日の発行後、FCRv2.0が適用されるのは6ヶ月後の2015年4月1日となります。

5) MSCでは今回の見直しにあたり、これまでにステークホルダーから提起されてきた問題に対処し、より明確で一貫性のあるFCRにすることで、現在の科学的理解や国際的に認められた最良事例とMSC規準とを確実に合致させることができました。

6) 新しい規準では、MSC認証漁業が混獲種への累積的なマイナス影響を与えるリスクはありません。一定の漁獲高を超えるすべてのMSC認証漁業は、その合わさった活動によって混獲種の回復が妨げられていないことを実証できなければなりません。これらの要求事項は業績結果の要求事項として審査されます。

7) 脆弱な海洋生態系(VME)に対し、特別な配慮が求められることになります。漁業のVMEに対する影響に関する新たな要求事項に加えて、VMEとの接触、およびそうした接触についての管理に対する要求事項が強化されました。MSCでは、2009年にFAOが発行した「公海における遠洋漁業の管理に関する国際ガイドライン」よりも更に一歩踏み込んだ形で、各国の管轄海域におけるVMEにも配慮を求めることにしました。

8) 複数の認証漁業によるVMEに対する累積的な影響を回避するため、認証漁業は、他のMSC認証漁業による深刻かつ回復不可能なダメージを与えないようにするための予防的措置を尊重しなければなりません。

9) 新たに導入された要求事項では、MSC認証漁業は、不要な魚種および絶滅危惧/保護種(ETP種)の死亡率を極力抑える方法を定期的に検討し、それが適切である場合にはその方法を実施しなければなりません。これはFAOが2011年に定めた「混獲の管理および廃棄の削減に関する国際ガイドライン」に合致するものです。

10) 今回の改訂において、MSCは、生息域への深刻かつ回復不能なダメージを回避するための要求事項をより明確にし、国際的な最良事例である、2009年にFAOが定めた「公海における遠洋漁業の管理に関するガイドライン」に合致させました。これにより、漁業は5年~20年の間に回復が見込めないほどのダメージを生息域に与えないよう努めなければなりません。

11) MSCでは、生息域についてのリスク評価に基づく評価方法を初めて定め、生息域への漁業の影響に関するデータが十分にある場合を除き、この方法が適切であるとしています。この評価法では、底生生物の生息環境への影響が低い漁具を使用している漁業や、回復力が元々高い海域で操業している漁業は、高得点を得ることができます。反対にそうでない漁業の得点は低くなります。

12) 水産科学および管理方策の発展に伴い、MSCではサメのフィニングの禁止条項を改訂しました。これまでと同様に、漁業がサメのフィニングを行っていない確実性のレベルに対して評価が行われます。

13) サケ漁業に対し、規定値としての修正規準を新たに導入しました。人工孵化放流などの増殖活動、およびサケ資源特有の複数形群構造などを評価する際の要求事項が含まれています。

14) FCRv2.0に盛り込まれた新たな認証要求事項が、漁業審査のコスト高騰を招くのでは、という懸念が一部のステークホルダーから寄せられました。コストの現状維持、もしくは状況に応じた削減を行うため、MSCでは、監査および再認証審査の要求事項を改訂し、一定の条件を満たした漁業については、既存の認証の拡大を認めることにしました。これにより、認証に付けられた条件が少なく、情報開示に関する透明性の高い優れた業績の漁業は、監査および再認証費用を削減することができるようになります。更に、既存の認証範囲に魚種や漁具、漁域、漁業者を追加、拡大することも容易になっています。

15) 外部査読のプロセスの標準化を進め審査プロセスの効率を高めるために、MSCは、外部査読者を確保するための独立した管理機構として、ピア・レビュー・カレッジの設立に着手しました。外部査読者のコメントをこれまで以上に反映させる目的で、いくつかの審査ステップが改訂されています。

16) サプライチェーンに対する監視が厳しくなってきていることを受け、MSCでは、漁業からサプライチェーンまでの製品のトレーサビリティを確実なものにするための要求事項を強化しました。

17) 強制労働をさせたとして起訴された企業には、MSC認証を取得する資格が認められません。認証を取得している企業、漁業グループクライアントの各メンバー、およびその請負事業者は、強制労働によって認証を取り消されないよう、強制労働に関する国内法および国際法を遵守し、関連するガイダンスがある場合にはそれに従わなければなりません。

18) 改訂規準が発行されてから、実際に適用されるまでには6ヶ月の期間があります。公平で一貫性のある漁業審査が確実に実施されるよう、第三者認証機関には、その間に変更点を十分に理解していただくことが望まれます。

19) 漁業認証規準の見直し後も、MSCは引き続きFAOのエコラベル・ガイドラインおよびISEALの規準設定規範に合致するものとなっています。

20) 上記の改訂によって、MSC漁業認証規準は、持続可能な天然漁業を対象とした、世界で最も優れた認証プログラムを確実に提供し続けることができます。これまで規準の改定が頻繁に行われ過ぎていた、という一部のステークホルダーからの意見がありましたが、FCRv2.0の発行後、少なくとも5年間は規準の変更は行わず、その後、MSC評議員会が規準の見直しの必要性があるかどうかを検討することになります。