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チリ沖ファン・フェルナンデス諸島の伝統ミナミイセエビ漁業がMSC認証を取得

太平洋の離島コミュニティー、ファン・フェルナンデスのミナミイセエビ・トラップ(かご)漁業がMSC認証の取得に成功しました。これにより、ファン・フェルナンデスのミナミイセエビには、持続可能で、適切に管理された漁業の証しであるMSCの青いエコラベルが表示できるようになります。

MSC漁業認証の取得は極めて重要な成果です。本漁業は、将来にわたる海洋生態系の健全性の保護のために優れた業績を残している248のMSC認証漁業の仲間入りを果たしたことになります。

MSC認証を取得することによって、海洋環境の保護に取り組む漁業として認知されるだけでなく、持続可能な水産物への需要が増している国際市場への進出も可能となります。このことは、チリ本土の沖合400マイルに位置するファン・フェルナンデスの島民の生活向上に貢献するものと期待されています。MSC規準を遵守することは、島民800人の生活を支えるミナミイセエビ資源の保護に向けた取り組みでもあります。

アメリカ地域コマーシャルディレクター、ジェフ・ボランは次のようにコメントしました。「伝統漁業の認証取得はファン・フェルナンデスのコミュニティーだけでなく、チリを初めとする全ての発展途上国にとって朗報です。MSCでは、規模や種類を問わず、すべての漁業にプログラムへの参加を呼びかけています。ファン・フェルナンデスの方々に、MSC認証の取得による環境および市場便益をぜひとも享受して頂きたいと願っています」。

ファン・フェルナンデス諸島とロビンソン・クルーソー島

3つの島からなるファン・フェルナンデス諸島で最も大きい島がロビンソン・クルーソー島です。ロビンソン・クルーソーと言えば小説でお馴染みですが、1704年にこの島に漂流し、1709年まで自給自足の生活を強いられたアレキサンダー・セルカークという実在の船乗りの体験を基にしたものとされています。今日では、800人以上の島民が暮らしていますが、ミナミイセエビ漁業はその重要な経済基盤となっています。コミュニティーの存続そのものが、120年間にわたって人々の暮らしを支えてきたミナミイセエビ資源の保護に大きく依存しているのです。

漁業を構成しているのは、ロビンソン・クルーソー島、サンタ・クララ島、アレキサンダー・セルカーク島の3つの島からなるファン・フェルナンデス諸島とその北のデスベントゥラダス諸島です。近年の総水揚量は年間およそ100トンで、主な輸出市場は中国とフランスです。

ファン・フェルナンデス漁業では、次の5つの主要管理措置が島民の全面的協力の基で実施されており、その成果が近年になって現れてきています。ミナミイセエビを獲ることができるのは島民のみで、それも伝統漁業のライセンスを取得した漁業者だけです。1日に数トラップしか扱うことのできない小型の漁船のみの使用が認められています。トラップを設置する場所についても非公式ながらも個々の縄張りが認められています。また、漁獲できるミナミイセエビの最小サイズは甲長115mmという制限があり、4ヶ月半の禁漁期が設けられています。

ファン・フェルナンデスの伝統漁業への国家の支援

審査の費用は、チリ共和国の水産担当次官(SUBPESCA)が、政府の漁業管理基金(スペイン語の頭文字をとってFAP)を通じて負担し、プロジェクトの管理については、チリのコンセプシオン大学が担当しました。これは元々、ファン・フェルナンデスの伝統漁業を支援し、国際市場における製品の差別化を図るために始まった取り組みです。

チリ共和国の水産担当次官であるラウル・スニコ氏は次のように述べました。「今回の成果は、チリのミチェル・バチェレ大統領が進める漁業政策に沿ったものです。漁獲高の増加だけで漁業の発展を図るのはもはや限界となっています。今のチリに必要なのは、付加価値のある水産物を提供できる持続可能な漁業であり、その代表的な例がファン・フェルナンデスのミナミイセエビ漁業なのです」。

また、漁業を代表してパブロ・マンリーケスとフリオ・チャルモロの両氏が次のように述べました。「今回の認証取得により、私たちは持続可能な漁業として認知されました。ファン・フェルナンデス漁業では、120年間にわたって培われた伝統的な漁業管理を推進し、環境に優しい固定漁具を使用しながら、協働で漁業に関する主要データの集計に取り組んできました。10年前、漁業の業績を評価する上での継続的な基本情報が不足していることを認識したファン・フェルナンデスの漁業者たちは、コンセプシオン大学海洋学部のビリー・エルンスト博士と協働で、コスト効率の高い継続的なモニタリング・プログラムを開発しました。これがMSC認証の取得の基盤となったのです。この重要な成果に向け、チリ水産担当次官で甲殻類漁業ユニット・コーディネーターのアレハンドロ・カルステル氏を通じてご尽力頂いたチリ政府に対してお礼を申しあげます」。

MSCのジェフ・ボランはこれを受けて次のように述べました。「小規模漁業であってもMSCの厳格な規準をクリアすることができるという確信をもって、ファン・フェルナンデス漁業の支援をしてくださったチリ政府に感謝の意を表したいと思います。これが刺激となり、地域の他の漁業もMSC認証の取得に取り組んでもらえることを期待しています」。

審査と認証について

MSC規準への適合を審査したのは、独立認定機関によって認定された認証機関であるIntertek Fisheries Certification(IFC)です。審査では、MSC漁業認証規準の3原則に基づいて、漁業資源の状態、漁業による海洋生態系へのインパクト、および漁業の管理システムが詳細にわたって評価されました。ファン・フェルナンデスのミナミイセエビ(Jasus frontalis)漁業についての詳しい情報、およびMSC規準における漁業の得点を記した公開用認証報告書はMSCのホームページwww.msc.org/track-a-fishery/certifiedに掲載されています。