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持続可能性を主導するインドのショート・ネック・クラム漁業、インド初のMSC認証を取得

途上国の資源保護への取り組み―アシュタムディの漁業に世界が注目

世界を主導する持続可能な天然漁業のための認証プログラムである海洋管理協議会(MSC)規準認証を、このたびインドの漁業が初めて取得し、発展途上地域の持続可能な漁業にとっての大きな一歩となりました。

この伝統的漁業は、WWFインド、地域および地元のパートナー達と協働してMSC認証を取得したことで、世界から認知されることになるでしょう。

アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業を守る

インド南部のケララ州アシュタムディの漁業は1980~1990年代のベトナム、タイ、マレーシアからの需要により成長を遂げました。1991年には年間漁獲量が1万トンに達しピークを迎えましたが、過剰漁獲のせいで1993年には、50%減少してしまいました。資源を回復させるために、最少輸出サイズの設定、機械によるショート・ネック・クラム採集の禁止、禁漁期の設定、網のメッシュサイズの規制などの対策がとられました。これらの対策は短期間で効果をあげました。この漁業は過去10年もの間、年間およそ1万トンの漁獲量を維持しています。

持続可能な漁業としてMSC認証を取得するために取り組んだことにより、この資源は将来の世代にわたって守られていくことでしょう。この漁業は1,000人に及ぶこの地域の漁業者たちの生活を支えています。漁業者たちは丸木舟を漕いで漁場へと向かいます。彼らは水中に潜って手足を使って貝を集めたり、2,3人の組になって丸木舟から網を使って貝を採集します。好漁の時には、4~5時間で1人当たり200キロほどの貝を採ります。またこの地域では3,000~4,000の人々が、貝の洗浄、加工、販売に携わっています。最近の調査によると、アシュタムディ河口のショート・ネック・クラム漁業は1,350万ルピー(22万ドル)の価値があるとされています。

発展途上世界を牽引

アジアの国として3番目にMSC認証を取得したこのアシュタムディの漁業は、インドの他の漁業にとどまらず、発展途上世界全体を牽引しています。水産物は世界で最も多く取引されている食品であり、発展途上世界においては、他の農産物よりも経済的に重要なものとなっています。2012年の純輸出収入は353億米ドルで、コーヒー、紅茶、バナナ、ココア、米、ゴムなどの輸出収入を超えています(世界漁業・養殖業白書 2014年)。

これより、アシュタムディの漁業によるショート・ネック・クラムには、MSCの青いエコラベルを付けることができます。これはアジアの途上国においてこれまでに2例しかない快挙であり、今後アメリカやヨーロッパで新しい市場を切り開いていくことができるでしょう。

MSCの規準ディレクター、デビッド・アグニューは次のようにコメントしました。「アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業とWWFインドにお祝い申し上げます。MSCのプログラムは、漁業の規模、サイズ、タイプ、地域にかかわらず、持続可能な管理が成されているすべての漁業に開かれているものですが、また同時に、世界で最も厳密で、科学に基づいた規準でもあります」。

「今回、この小規模な漁業がインドで初めてMSC認証を取得されたことを大変嬉しく思います。発展途上地域では、MSCの認証プログラムを通して、その持続可能性を証明する漁業が増えてきていますが、今回の新たな認証取得はたいへん重要なものとなるでしょう」。

WWF、漁業者、政府による協働

WWFインド、海洋保護プログラム、シニアコーディネーターのヴィノード・マラレトゥ氏は次のように述べました。「WWF、漁業者、そして政府によるパートナーシップにより、優れた管理のための取り組みが目に見える形で現れました。WWFはMSC認証を、小規模漁業の海洋環境を保護するものとして捉えると同時に、漁業の長期にわたる持続可能性のための効果的なツールとして捉えています」。

その拠点をケララ州コーチにおくWWFインドの海洋チームは、このショート・ネック・クラム漁業がMSC認証の予備審査を受け、認証要求事項に合致するための改善に取り組み始めた2010年当初より、ケララ州水産省、中央海洋漁業研究所(Central Marine Fisheries Research Institute :CMFRI)の軟体動物部門の研究者たち、そして漁業コミュニティの人々と緊密に協力してきました。

認証はパートナーとの協働によって生み出される力、そして環境と生活を守るための漁業者たちによる草の根の運動の大切さを証明するものです。MSC審査のための準備の一環として、アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業者らは、管理方策の策定に協力し、地域および州レベルで漁業を正式に代表する組織として、村のショート・ネック・クラム漁業評議会(Village Clam Fishery Council)を立ち上げました。

新しい市場開拓の可能性

ケララ州の水産物の年間消費量は国内で最も高く、1人当たり22.7キロとなっています。アシュタムディのショート・ネック・クラムのおよそ80%はアジアに輸出されていますが、今後はアメリカやヨーロッパで新しい市場を拡大することが期待されています。ベトナムのベンチェのミスハマグリ漁業では2009年にMSC認証を取得して新しい市場を開拓し、より少ない労力で価格は30~50%も上昇、漁業者たちの収入は400%も増加しました。

参加を容易にするツール

アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業は、MSCプログラムの7%を占める発展途上地域からのMSC参画漁業の一員となりました。MSCでは、データが限られている漁業でもプログラムに参加しやすくするための新しいツールや方法論を開発しています。今回のアシュタムディの漁業でもデータが不足している場合に使用できるリスク・ベース・フレームワーク(RBF)が用いられました。

インド政府商工業省海産物輸出振興局のレーナ・ナイル氏は次のように述べました。「アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業者の方々をはじめWWFと中央海洋漁業研究所の方々にお祝い申し上げます。アシュタムディのショート・ネック・クラム漁業がMSC認証を取得したのはたいへん素晴らしいことです。インドで持続可能な操業を行なう他の漁業も、今後MSCプログラムに参加するようになるでしょう。」