漁業改善プロジェクト(FIP)は、漁業者、企業、NGOなどのステークホルダーが協働し、漁業の持続可能性の向上を目指します。
持続可能な水産物に対する市場の需要の高まりによって、FIPの数は大幅に増加しています。MSCは、認証取得を目指すFIP参加漁業に対して、MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)による支援を行っています。
MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)
多くの漁業では、MSC漁業認証規格を満たすまでに大幅な改善が必要になります。MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)は、第三者の審査機関が行う検証によって改善の進捗が測定される、認証取得に向けた支援プログラムです。
MSC漁業認証規格は、持続可能な漁業のための国際基準です。漁業が適切に管理されているか、そして環境面で持続可能かを評価するために用いられています。
現在そして将来の世代のために水産物の供給を確保するには、持続可能性に向けた改善に課題を抱えている漁業も含めて、世界中の漁業がMSCプログラムに参加できるようになる必要があります。
ITMは、認証取得を目指しているものの、MSC漁業認証の審査に入る準備がまだ整っていない、あらゆる規模、地域の漁業を支援するためのプログラムです。
MSC漁業認証規格への適合に向けて改善を進めるにあたって、ITMプログラムの参加漁業は、第三者による定期的な検証を受けることになります。これにより、漁業は持続可能性への取り組みの信頼性を示すことができます。
2024年末までは、暫定のITMプログラムで運用しています。この期間において、費用や参加条件など、プログラムの詳細が変更される可能性があります。
ITMプログラムの要求事項(第2.0版)に沿っている漁業については、Track a Fishery(英語)に掲載されます。検索フィルターのStatus (Units of Certification)から「In-Transition to MSC」を選択することで、ITMプログラムに参加している漁業を探すことができます。
ITMプログラムの要求事項 第1.0版を使用している漁業のリストはこちら(英語)をご覧ください。
ITMに参加するメリット
このプログラムは、漁業がMSCの漁業認証規格に照らし合わせた審査を受け、認証を取得するための準備を支援します。
MSCは、漁業の持続可能性における世界的なリーダーとして高い評価を得ています。漁業改善プロジェクトに参加している漁業から水産物の調達を検討しているサプライヤーに対して、ITMに参加しているということで第三者の検証システムによる信頼性を示すことができます。
MSCの漁業改善ツールは、改善が必要な項目を特定し、改善計画を策定し、進捗を管理するのに有用です。
MSC漁業認証の審査を行う認定を受けた第三者審査機関が、実施された改善を検証します。これにより、漁業はすべてのステークホルダーに対して進捗状況を示すことができます。
ITMに参加している漁業は、MSC「海のエコラベル」を使用することはできません。
プログラムの内容
ITMには以下の3つの段階があります。
1.プログラムへの参加申請
漁業は、第三者審査機関によって、プログラムへの適格性を評価されます。適格性が認められた後、審査機関が漁業に代わってプログラムへの参加を申請します。
2.定期的な進捗状況の確認
審査機関は、漁業の改善計画に対する進捗状況を確認します。漁業は、MSC漁業認証規格に対する予備審査報告書またはMSC漁業認証規格に則った評価による報告書を通じて特定された、改善が必要な業績指標の得点の向上を目指します。
3.MSC漁業認証 審査への移行
すべての得点が改善された後に、認証取得を目指しMSC 漁業認証の審査に移行します。
適格性要求事項
ITMは、漁業の規模や地域を問わず、あらゆる漁業に開かれています。
参加資格は以下の通りです:
- 認証取得を目指し、5年以内にMSC漁業認証の審査に入る計画があること。
- MSCプログラムの適用範囲にあること。
- 過去3年以内に、最新のMSC予備審査報告書用テンプレートの採点項目をすべて網羅した予備審査を完了していること。これは第三者審査機関によって実施または結果を検証されたものでなければなりません。
- または、有効なMSC審査報告書があること。
- 改善計画を策定し、審査機関によって検証されていること。
申請方法
適格性要求事項を満たした漁業であれば、通年で申請することができます。
申請にご興味のある方、プログラムについて詳しくお知りになりたい方は、MSCジャパンまでお気軽にお問い合わせください。
新規格への移行
2024年2月に発表されたMSC漁業認証規格の適用開始に係る変更により、MSC漁業認証規格第3.0版への移行期間は2030年11月1日まで延長されることが決定いたしました。
第3.0版を使用して本審査入りを予定するITMプログラム参加漁業は、2030年11月1日までに第3.0版での予備審査を受ける必要があります。
MSC漁業認証 第2.01版を使用するか、第3.0版に移行するかについてのご相談は、MSCジャパンまでお問い合わせください。
第三者審査機関に向けて
MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)の要求事項とガイダンス(英語)では、漁業の適格性要求事項の遵守、および継続的な進捗を検証するための手順の概要を示しています。
審査機関は、以下のMSC指定のテンプレートを使用して、ITMプログラムに対する漁業の適格性、および進捗状況を報告する必要があります。
ITM関連書類・MSC漁業改善ツール
※申請時には英語版のファイルをご使用ください
※英語版ファイルの内容確認にご活用いただける日本語版は、現在準備中です。英語版ファイルにご不明な点がございましたら、MSCジャパン漁業担当までお問い合わせください。
MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)の要求事項とガイダンス(第2.0版)
英語版/日本語版
審査機関が漁業の適格性を確認し、継続的な進捗の検証を行うための手順が規定されています。
MSC予備審査報告書用テンプレート第4.1版(MSC漁業認証規格 第3.0版用)
英語版/日本語版
MSC予備審査報告書用テンプレート第3.4版(MSC漁業認証規格 第2.01版用)
英語版/日本語版
ITMプログラムに申請するために必要となる予備審査報告書のテンプレートです。その他有効な審査報告書に必要な内容の確認にもご利用いただけます。
MSC改善計画用テンプレート第3.0版(MSC漁業認証規格 第2.01版、第3.0版用)
英語版/日本語版
MSC漁業認証の取得に向けた課題に対処するための改善計画を策定するテンプレートです。
MSC漁業改善進捗管理表(BMT)第4.0版(MSC漁業認証規格 第3.0版用)
英語版/日本語版
MSC漁業改善進捗管理表(BMT)第3.1版(MSC漁業認証規格 第2.01版用)
英語版/日本語版
漁業改善の進捗状況がMSC漁業認証規格の業績評価指標に沿って記録されます。本審査に入るまでの改善見込みを確認でき、漁業の改善状況をステークホルダーに一貫して共有することができます。
ITMプログラム参加漁業は、改善計画に対する進捗状況を定期的に報告する必要があります。ITMプロジェクトマネージャーがこのテンプレートに沿って記入した情報を基に、第三者審査機関が進捗確認報告書を作成します(別個ファイルを使用)。