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気候変動は、海や海洋生物に深刻な影響を及ぼしており、水産資源とその餌の分布にまで変化をもたらしています。

海を健全に保ち、将来にわたって海の豊かな恵みを享受するためには、経済と環境のバランスをとることがこれまで以上に重要になっています。持続可能な漁業を推進していかない限り、それを実践するのは不可能です。

気候変動は、海や海洋生物にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

海は気候力学において重要な役割を担っています。地球上の炭素循環の83%は海を経由して行われています[1]。1970年代以降、温室効果ガスによる余剰熱の93%を海が吸収してきました。

また、海には50万から1,000万種の海洋生物が生息しており[2]、地球上の生物多様性に多大な貢献をしています。

これほどまでに重要である海を、私たちは持続可能な方法で管理していかなければなりません。海に変化が起きれば、水産資源にも変化が及びます。持続可能な漁業管理を行うためには、気候変動のいかなる課題にも適応していく必要があります。

この30年間で、海洋熱波の発生は50%以上増加したと推定されています[3]。

世界の海水温は、2100年までに1度〜4度上昇すると予測されています[4]。

こうした変化は、海洋生物に影響を及ぼしています。水温の急激な上昇や海洋酸性化によって、海洋生物やそれらのすみかが失われてしまう可能性があります。海流の変化や海水温の上昇は、水産資源の分布を変え、生態系の構造までも変化させています。

気候変動は漁業にどのような影響を及ぼしますか?

気候変動は水産資源を脅かす一方で、新たな漁業の機会も生み出します。

熱帯海域における潜在的漁獲量は、2050年までに最大40%減少することが予測されています[5]。

一方で、北大西洋や北太平洋などの高緯度海域では、一部の魚種の生息域が拡大しています。

このような変化は、課題をもたらします。持続可能な漁業を続けていくためには、新しい漁業管理を取り入れることが必要です。変化していく水産資源をどのように管理すべきかについて、水産業界と政府は、特に魚が自国の海域を越えて移動する場合や、漁獲量を大幅に削減する必要がある場合には、なかなか合意に至ることができません。

魚介類や藻類といった、いわゆる「ブルーフード」は、環境負荷を軽減しながら人が摂取する栄養を改善する可能性を持っています[6]。

ブルーフードへの移行は、SDGs(国連の持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」、目標12「つくる責任、つかう責任」および目標14「海の豊かさを守ろう」等の実現に貢献することが期待されます[7]。

 

魚は気候変動の影響を受けているのに食べてもいいのでしょうか?

食べても大丈夫です。MSC「海のエコラベル」が付いた水産物を選ぶようにしましょう。MSC漁業認証を取得した漁業は、適切に管理されており、環境の変化にも対応できます。MSC認証漁業は、持続可能な漁業であり続けるために、最新の科学的勧告に従っています。

天然魚は低炭素な食品です

漁業は、他のタンパク質の生産方法に比べて、気候変動に与える影響も小さいのです。天然魚を対象とする漁業の温室効果ガス排出量についての調査[8]によると、1kgの漁獲に対して排出されるCO2の量は1〜5kgであることが明らかになりました。これに対し、赤身肉の生産では、肉1kgあたり50〜750kgのCO2を排出すると推定されています。

また、持続可能な漁業は、その効率性を高めることで、CO2排出量を削減できることが証明されています。例えば、アイスランドの漁業では、一航海あたりの漁獲量の増加により出漁期間が短縮され、燃料消費量およびCO2排出量が削減されています。

ブルー・トランスフォーメーション

ブルー・トランスフォーメーション

「ブルー・トランスフォーメーション」とは、世界の食料安全保障を支える海の潜在力を引き出すための国連のイニシアティブです。

持続可能な漁業は気候変動にどう対処していますか?

MSCの漁業認証規格を満たしている持続可能な漁業は、適切に管理され、気候変動による海洋環境の変化にも順応できます。

MSC認証漁業では、環境への影響を軽減し、持続的に獲ることができる漁獲量を守って漁業を行うために、効果的なモニタリングと資源管理が導入されています。科学者による勧告に基づき、起こりうる環境の変化に対応するための管理計画が事前に合意されているのです。

これらの漁業は、経済と環境のバランスをとりながら、海と水産物の供給を守ることが可能であることを示しています。

 

気候変動に漁業がうまく対応できないと、どうなるのですか?

気候変動は水産資源に予期せぬ影響を及ぼすため、MSC認証漁業であっても困難に直面することがあります。

気候変動の影響を受けている水産資源の例を2つご紹介します。

北東大西洋のタイセイヨウサバ

2007年以降、タイセイヨウサバの分布域は急激に変化してきました。海水温の上昇に伴い、資源が北上しました。

タイセイヨウサバ分布の変化は、水産資源の配分をめぐる沿岸国間の対立に発展しています。魚が地政学的な境界を越えて移動するため、タイセイヨウサバ資源をどのように管理すべきかについての合意が得られていないのです。

合意に至らないまま、北東大西洋のタイセイヨウサバのMSC漁業認証は2019年3月に一時停止となり、8カ国の認証漁業が影響を受けています。

MSCは、タイセイヨウサバ、ブルーホワイティング、タイセイヨウニシンを漁獲する国に対して、一刻も早く科学的勧告に沿った漁獲枠の合意に至るよう求めています。

北海のマダラ

近年、北海におけるマダラの個体数が減少しており、気候変動がその一因と考えられています。気候変動によって、成魚になるまで生き残る稚魚が少なくなっています。成魚が減少したことで、北海のマダラ資源を対象に持続可能な漁業を行うことが難しくなり、2019年9月に北海のマダラ漁業のMSC漁業認証が一時停止となりました。

漁業認証の一時停止を受けて、北海のマダラ漁業はその後の5年間でマダラ資源を回復させるための措置を講じています。

 

水産資源を守るために、ほかにできることはありますか?

漁業管理者は、今後も水産資源を維持していくために、より予防的なアプローチを導入する必要があります。適切な漁業管理のためには、各国政府が緊密に協力することも必要です。これは、経済的利益と環境的利益のバランスをとろうとしている多くの国にとって厳しい課題となっています。

しかしながら、一部に進展も見られます。例えば、2015年7月、カナダ、デンマーク(グリーンランドとフェロー諸島を代表)、ノルウェー、ロシア、アメリカの政府は、中央北極海の公海における無規制の漁業を防止する協定に署名しました[9]。