はえ縄

はえ縄漁業とは？

はえ縄漁業は、餌のついた釣り針を縄に付けて魚を獲る漁法です。はえ縄を仕掛ける水深は対象となる魚種によって異なりますが、表層、中層、または底層（海底）に設置されます。

浮きはえ縄

浮きはえ縄が英語でpelagic longline（外洋のはえ縄）というのは、浮きはえ縄が主に外洋で使用されるからです。浮きはえ縄は、水面近くから深さ50から300メートルの間に仕掛けられます。この深さを維持するために、はえ縄の長さに沿って浮きやブイを設置します。はえ縄を水中に仕掛けておく時間はさまざまですが、通常は半日以内です。

はえ縄の長さは50から100kmにも及び、何百から何千もの餌を付けた釣り針が、短い枝縄に取り付けられて、メインとなる幹縄から間隔を空けて吊るされます。枝縄の長さと間隔は、対象となる魚種によって変わります。

底はえ縄

底はえ縄は通常、沿岸域の海底、または海底近くに縄をはり、重りで固定します。浅い沿岸水域から水深1,000m以上の場所に仕掛けられます。

通常、底はえ縄は、浮きはえ縄ほど長くなく、数百メートルから50km程の長さになります。

はえ縄漁業の対象種は？

使用される釣り針の種類と縄を設置する水深によって、漁獲される魚種が変わります。

浮きはえ縄は主として、マグロ類（クロマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロなど）やメカジキなど、中層や表層を泳ぐ種を対象にしています。

底はえ縄は主として、オヒョウ、マダラ、ヘイク、マジェランアイナメなど、深海魚や底生魚を対象にしています。

はえ縄漁業が環境に及ぼす影響は？

どのような漁具であっても海洋環境に影響を及ぼす可能性があり、持続可能な管理を行わなければ、環境に重大な影響を与える恐れがあります。

はえ縄漁業は、非対象種が餌を付けた釣り針にかかって混獲される可能性が高いと言われることがます。浮きはえ縄では、ウミガメ、サメ、エイ、海鳥、海洋哺乳類、その他の絶滅危惧種・保護種（ETP種）が混獲されることがあります。

はえ縄漁業はどのようにして混獲を減らすことができるか

すべてのMSC認証取得漁業は、その漁業の操業と漁具の環境に及ぼす影響が低いことを実証しなければなりません。

多くの漁業は、MSC漁業認証規格に照らして持続可能な漁業として認証されるために、モニタリング方法を改善して、非対象種との遭遇を減らすことを求められます。これは、混獲される種がいつ、どこで、捕獲される危険性が最も高いのかについてよく理解することで実現できます。

リリースとデータ収集

持続可能な浮きはえ縄漁業では、混獲された生物を生きたままリリースするために、漁業者がリリース方法の講習を受けることがあります。漁業者は、混獲した生物をリリースする前にタグを付け、混獲種のデータ収集に活用する場合があります。このデータからは、その種の生活史、リリース後の生存率、回遊ルート、繁殖地に関する詳細な情報を得ることができます。そのような情報は、混獲種の生存に重要な時期や場所における操業を避けることにも役立てられます。

データは、漁業の混獲種との遭遇について記録して報告を行う、独立した科学オブザーバーからも収集することができます。

混獲を防ぐ装置

持続可能な漁業では、はえ縄の周りに目立つ吹き流しを設けるトリラインなど混獲を防ぐ装置を活用しています。トリラインは、はえ縄が仕掛けられるときに海鳥が餌の付いた釣り針に近づくのを防ぎ、海鳥が絡まってしまう可能性を低減させます。

混獲の状況を改善するために、漁具自体を改良することもできます。そうした漁具の例としては、釣り針が非対象種の口に引っかかってしまう確率を下げて、リリースがしやすくなるサークルフックなどがあります。また、はえ縄に重りを付けて早く水中に沈むようにすることで、表層で海鳥が接触する確率を低くしたり、ワイヤートレース（金属製の縄）の使用を避けることによって、サメの混獲数を減らすこともできます。

過剰漁獲をなくすためにはえ縄漁業ができることは？

MSC認証取得漁業によって海上で得られたデータは、混獲を最小限に抑えるだけでなく、操業についての情報提供や漁獲の把握に活用されます。こうしたデータからは、漁獲対象資源の個体数や非対象種との遭遇に関連する重要な情報が得られます。そのデータを、漁業の漁獲制御ルールや漁獲戦略、漁獲量制限の設定に活用し、資源が過剰漁獲されることのないようにしています。