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COP15とは?

2022年12月7日から19日まで、カナダのモントリオールにて、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が開催されます。

生物多様性条約(CBD)は、地球上の生命をいかに活用し、保全するかを目的とした国際条約です。1992年にブラジルのリオで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択されました。

COP15では、新たな生物多様性枠組を設定し、微小なバクテリアから巨大なクジラまで、陸と海を含む地球上のすべての生物の多様性の損失を回復させるために、世界各国が集まって議論する予定です。

生物多様性枠組とは?

生物多様性枠組(国連環境計画)は、今後10年間の生物多様性と生態系の保全と持続可能な管理について、21のターゲットを掲げています。

この枠組では、生物多様性の損失を悪化させる経済、社会、金融モデルを変革するため緊急の対策が求められています。

COP15とCOP27の違いは?

COP15は生物多様性に直接関わる会議ですが、2022年11月にエジプトで開催されたCOP27は気候変動に関する会議です。COP15とCOP27は別々の会議ではあるものの、いずれも生物多様性の損失と気候変動が本質的に関連していることについて世界の国々が初めて認めた、2021年のCOP26のグラスゴー気候合意を引き継ぐ会議です。

生物多様性が意味するのは?

生物多様性とは、地球上の生命の多様性を指す言葉です。多様性は、「種の豊かさ」(特定の地域における異なる種の数)と「種の構成」(これらの種の相対的な割合)の両方を測定して算出します。さらに、多様性が減少しているかどうか評価するには、一般的に個体群や種の個体数(個体の総数)も考慮されます。

なぜ生物多様性が重要なのか?

複雑な生態系は、多様な種の相互作用によって形成されており、すべての生物はその中でそれぞれの役割を果たしています。こうした生態系は絶妙なバランスを保ちながら、空気や水を供給し、気候を安定させ、人類をはじめとする地球上の生命の維持を可能にしています。

生物が多様な生態系は、健全な生態系です。そのような生態系ではそれぞれの種が各自の役割を果たしています。例えば、捕食者は採餌によって下位の生物が増えすぎるのを抑制すると同時に、弱っている動物や病気の動物を排除し、植物は人間を含む動物たちに酸素、食料、すみかを提供します。こうした自然から受ける恩恵は「生態系サービス」と呼ばれます。生態系の多様性が損なわれたり、種が絶滅したりすると、生態系サービスも失われてしまいます。

私たちは、空気、飲み水、食料を生物多様性に依存しています。しかし現在、私たち人類は、自分たちの生活を支えるために、地球の1.6個分に相当する自然資源を消費しています(注1)

人間の活動による生息地の損失、劣化、汚染、食料生産を目的とした持続可能ではない自然の利用など、現在のペースで環境破壊が進むと、生態系は崩壊してしまうかもしれません。そうなると、生物の大量絶滅や気候変動の悪化をもたらす恐れがあります(注2)。すでに世界中でこのことを裏付ける証拠が見られます。

なぜ海洋の生物多様性が重要なのか?

長い間、熱帯雨林は「地球の肺」と考えられてきましたが、地球上の酸素の多く(およそ50〜80%)は光合成を行う海洋生物によって供給されています(注3)

海は私たちが呼吸する空気を提供してくれるだけでなく、気候を安定させる役割も担っています。蒸発した海水は凝結して雲になり、雨や雪となって大地を潤します。また、海洋とその生物多様性は、大気中の二酸化炭素を長期的に吸収し貯蔵するために重要な役割を果たしています。マングローブ林や大型藻類の植生は、海岸線や沿岸地域を嵐や浸食から守ってくれます。

海は人間の生命と生活の要であり、私たちの食料の多くを提供してくれています。魚は、世界の3分の1以上の人々の主要なタンパク源となっており、世界の6,000万人が水産業によって生計を立てています(注4)

海洋の生物多様性は、自然が健全であり、生産的で回復力を持ち、環境の変化に適応できる状態であり続けるために欠かせないものなのです。

なぜ海洋の生物多様性が脅かされているのか?

海洋生態系についての研究は、陸の生態系の研究に比べて研究対象へのアクセスが悪く、費用もかかります。しかし、人間が引き起こした気候変動と海洋生物多様性の損失が一体となって、海洋生態系に深刻な影響を与えていることは、科学的にも知られています。

過剰漁獲や生息地の破壊などといった人間の活動は、気候や海洋生態系、食物網に悪影響をもたらします。過剰漁獲は、漁獲対象の魚種資源の減少を招き、混獲の問題も引き起こします。大気中の二酸化炭素の上昇は、海水の温度上昇と酸性化を招き、すべての海洋生物の生活環(ライフサイクル)を脅かしています。沿岸や海底の脆弱な生息地の破壊は、海洋生物をさらに脅かし、炭素を吸収する能力の減少にも影響を及ぼしている可能性があります。

気候変動は海洋生物にどのような影響を与えるのか?

気候変動と海水温の上昇は、海の動物や植物の季節的な活動、特に魚類の回遊パターン、産卵場所、繁殖の時季に影響を及ぼしています。

海が温暖になると、海洋生物はより寒冷な海域へと移動します。つまり魚たちが従来の漁場から離れた別の海域に移動することになり、漁業で生計を立てている漁業者とその家族は直接その影響を受けることになります。

回遊ルートが変化することによって、サメ、ウミガメ、海洋哺乳類などの絶滅危惧種・保護種(ETP)が利用する海域と、漁業の対象魚種の漁場が重なることがよくあります。このため、これらのETP種が誤って捕獲されてしまう危険性があります。タイセイヨウセミクジラのような絶滅の危機にある種は、回遊ルートが変わったことでロブスターやカニ漁船の釣り糸に絡まってしまい、すでに減少している個体群へのリスクがさらに高まることになります。

多くの海洋生物は通常、季節の水温の変化をきっかけに、回遊や産卵場所への移動を開始します。しかし、水温の上昇、下降のペースや時期が異なってくると、一部の海洋生物は移動の時期を遅らせたり、まったく移動しなくなったりします。その結果として、資源をめぐる競争が激化したり、以前は避けられていたはずの捕食者の餌食になったりする可能性があるのです。

海水の温度は、魚類やウミガメなどの爬虫類を含む多くの海洋生物の子どもの性別にも影響を与えます。結果的に、個体数や次世代の環境変化への適応力にまで影響を及ぼす可能性があります。

海洋の生物多様性にとって、ほかにどのような脅威があるのか?

過剰漁獲は、資源量が持続可能性を維持できずに減少することで生物多様性の損失を招く3大脅威のうちのひとつであることがわかっています。1970年代以降、過剰に漁獲された資源の割合は約10%から35.4%まで増加しています。生物学的に持続可能なレベルを超えて漁獲された資源、すなわち生物自身で再生産するスピードを超えて漁獲された場合は、その資源の回復力は低下します。そしてさらに強い漁獲圧力がかかれば、資源は崩壊し、地域や世界の経済はもとより、広域な生態系にまで弊害をもたらす可能性があります。

海洋の生物多様性は、健全な海、地球、そして人類の生存にとって不可欠なものです。国連の「ポスト2020世界生物多様性枠組」では、海洋の生物多様性を維持する取り組みにおいて、信頼性のある、測定可能で科学に基づいた指標として、MSCの漁業認証規格が挙げられ、生物多様性の喪失をもたらす過剰漁獲を制限する必要性が強調されています。

海洋の生物多様性の損失に対して、COP15はどのように取り組んでいるのか?

COP15で合意される予定の新しい枠組では、2030年までに生物多様性の損失を阻止し、2050年までに回復させることを目標にしています。生物多様性条約(CBD)では、「ポスト2020世界生物多様性枠組」のターゲットの達成に取り組む各国政府、国連、およびその他の組織に対し、進捗度を測定するための様々な公式の「指標」または手法を使用することを奨励しています。

MSCのデータは、生物多様性枠組の2つのターゲットの指標として使用されています。その2つは「ターゲット5:種の採取、取引、利用を合法、持続可能に」および「ターゲット14:計画、政策、会計、開発プロセスへの生物多様性の価値の主流化、影響評価への統合」です。

気候変動を抑制するために設定されたゴールを世界が達成できない限り、生物多様性枠組のゴールを実現できないことは広く認識されています。気候変動に関するパリ協定と同じように、生物多様性についても野心的で科学的、そして包括的な協定が各国政府間で結ばれることが期待されています。